戒名に込められた想い
戒名に込められた想い
葬儀や法事の場で、「戒名(かいみょう)」という言葉を耳にされたことがある方も多いでしょう。
けれど、「戒名って、必要なんですか?」「つける意味は?」といった疑問もまた、寄せられます。
戒名とは、仏さまの弟子として新たに授かる名前です。
亡くなられた方が、生前のご縁をもとに仏道に入り、来世でも仏の教えのもとに安らかに歩んでいかれるようにという願いを込めて授けられます。
では、戒名に使われる文字には、どんな意味があるのでしょうか?
たとえば、ある方が生前に「人の支えになりたい」と地域の活動に尽力されていたとします。
その方の戒名には、「助」「和」「仁」「誠」などの文字が用いられることが多いでしょう。
それは単なる飾りではなく、その人の生きざまを仏の教えと重ね合わせて表現したものなのです。
また、病気のなかで長く闘ってこられた方には、「忍」「強」「信」などの文字が選ばれることがあります。
苦しみのなかでも耐え、誰かを思い、静かに祈って生きた姿を、仏道の眼差しで称える――それが戒名の持つ役割です。
仏教では、命には表も裏も、善悪も、高低もないと説きます。
どんな人生にも意味があり、どの命にも光がある。
だからこそ、戒名は亡くなられた方の一生をまるごと受けとめ、「仏弟子として迎える」ための尊い贈り物なのです。
戒名を授けるとき、私たち僧侶は静かに手を合わせながら、その方の人生に思いを馴せます。
ご家族の語られる思い出や、写真のなかの笑顔、その人が歩んだ道のりすべてを心に浮かべながら、ふさわしい一文字一文字を選んでいくのです。
ですから、たとえ短い文字列であっても、そこには深い意味とあたたかな願いが込められています。
そして何より、戒名は未来への贈り物でもあります。
子や孫、さらにその先の世代が位牌を前に手を合わせたとき、
そこに記された戒名の一文字一文字が、
「この人はどんな生き方をされたのか」「何を大切にしていたのか」
――そんなことを静かに語りかけてくれることがあります。
「名は体をあらわす」とも言われます。
戒名は、その人が仏弟子として歩まれた証であり、
その精神が今も子孫を見守り、導く“法の灯(ほうのともしび)”として生き続けているのです。
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